三年啓蟄/違う

目的地を尋ねれば最短の道のりが表示される。それに従い、南北線に乗っていればいい。しかし昼食がまだなので、乗り換えできる駅で降りることにした。学生の頃に見慣れた神楽坂下。JR飯田橋駅に向かうと見慣れない駅舎が目の前に。原宿駅すら建て替えられたのだから仕方がない。しかし、心なしか反対側の高層マンションに似せているのは、どういう意味があるのだろう。

昼食を済ましたので、提案の通り有楽町線へ向かうべきところ、東京大神宮があることを思い出す。去年は念願のお伊勢参りができた。それなら年明けのお参りに向かうべきと思い、足を運ぶ。作法通りでない手水の方法にも慣れてきたが、いつか元通りになるのか、それともこのまま定着するのか。この一年、いくつかの神社を参拝したが、ここにはいろいろな変化があった。初めの頃は中止されており、そのうち塩ビのパイプから流れ続けるようになった。それがいつからか竹に変わり、落ち着いたように思う。一度、近づくと水が一斉に勢いよく流れ出てきたことがあったが、あれには驚いた。手水舎の付近にセンサーが付いていたようだ。これが流行らなくてよかった。

少し駅から離れたのでもう一度目的地を尋ねる。元のルートが最短。しかし、歩いても無理がない距離だと分かる。時間は掛かるが、電車代は掛からない。街中であれば面白みもないが、皇居沿いを歩いていくのは面白そうだ。いろいろと意味のない正当化をして、とにかく、外濠から内濠に向かう。

外苑や北の丸公園、江戸城跡は歩いたことがあったが、その反対側は初めてだ。東京に通うようになって長いのに、内濠の遊歩道も知らなかった。こんな時勢とはいえ、春の陽気に誘われたのかたくさんの人がいる。私もその一人なのだけど。梅の花は散りかけて、桜の蕾は膨らみかける。鳥も羽虫も飛び交う。子犬の散歩を見かけたと思えば、小猿の散歩も見かける。気付けば看板を頼りに、最短の道のりからは外れていた。画面を非表示にして。

しばらくすると、国会議事堂が見えてくる。国会ってここにあったのか。当たり前だ。目的地は国立国会図書館なのだから。目的だけを頭に入れ、システムに従ってだけいると、そういう当然のことを思い浮かべられなくなるものだ。報道では議事堂を正面から映すが、図書館からは真横に見る。違う角度から見ると、見慣れたものも新鮮に感じた。

こういうことは、Siriには理解できないのだろう。

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